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二十一世紀社会への展望
―時代の転換期に新たな価値観を求めて―
平成12年度東京四部布教講習会講演録 平成13年発行
平成12年(西暦2000年)は20世紀最後の年であり、時代の大きな曲がり角であった。
環境問題をはじめとする地球規模の大きな課題を背負い、欲望の肥大化と精神の荒廃はとどまることを知らず、現代文明そのものが問われている時でもあった。
そのような時代に、世界を正しくリードする価値観と発想を法華経に学び、その一方で現代の最先端の知見とわが国の伝統文化の中から21世紀社会を展望しようと企画された講習会の講演録が本書である。
講師と講題は以下の通り。
- 「法華経開会の思想を考える」
- 立正大学社会福祉学部教授 三友量順
- 「江戸時代の循環型社会からのメッセージ」
- 作家 石川英輔
- 「21世紀社会における宗教の役割とは」
- 東京大学名誉教授 養老孟司
著名な講師陣による提言は、21世紀に入り13年を経た今読みかえしても大きな示唆を与えてくれるものである。
キリスト教受容をめぐる日本人の精神史
―キリスト教もう一つの顔―
日蓮聖人立教開宗慶讃 東京都南部宗務所 記念文化事業 公開講座講演録 平成15年発行
著者の水林澄雄師は、東京都品川区蓮長寺の前住職、元東京都南部宗務所長、明治学院大学倫理学・哲学教授という経歴を持つ。
本書の中で水林師は「キリスト教を鏡として、日本仏教の、あるいは仏教そのものの、あるいは日蓮仏教の有り様というものを、明確に把握するための手だてとして、キリスト教を論じる」と述べ、キリスト教を受容しながらも、その全てを受け付けない日本人の精神文化について論を進める。
秀吉の伴天連追放令、新井白石のキリスト教に対する疑問、内村鑑三の教会に対する不信など、5回の講義を通してキリスト教の知られざる一面を提示され、同時に日本人の精神性の高さを垣間見る事が出来た。西洋文化の波に流されず、法華経を芯に据えた価値観を育まなければと思いを新たにさせられる1冊である。
水林澄雄師は平成23年3月10日遷化された。
いのち 自殺者3万人の時代を迎えて
第28回京浜教区教化研究会議講演録 平成17年発行
3万人を超える自殺者の一人ひとりにかけがえのない家族があり、親しい友人があることを思うとき、一人の死がいかに多くの悲しみと苦しみを生み出すか、その中で僧侶や寺に暮らす者たちの役割は何か。
第1講は、自殺の予防とその実態について「いのちの電話」の常務理事であり、日本キリスト教団牧師でもある齋藤由紀夫氏から宗教者の立場も含めての講義。
第2講は、自死遺族の気持ちを「あしなが育英会」の西田正弘氏と自死遺児の大学3年生の学生さんから生の声を聴く。
第3講は、齋藤氏・西田氏に、早水日秀師・久住謙是師・松田英秀師を交えて、「自殺予防と遺族へのケア ―お寺としてできること」をテーマにしたパネルディスカッションの内容を掲載。
僧侶による自死対策の取り組みがほとんど行われていなかった平成16年に実践的かつ具体的な内容が語られていた。あれから10年、僧侶の意識がどれほど変わったかを本書から読み取ってほしい。
キリスト教を通して一神教の世界観を学ぶ
平成16年度東京四部布教講習会講演録 平成18年発行
21世紀を迎え、キリスト教・イスラム教など一神教勢力の台頭を目の当たりにして、我々仏教徒はどのように対応すればよいのか戸惑うばかりである。
本書は、東京都南部公開講座でお話しいただいた水林澄雄師の「キリスト教を鏡として日蓮仏教の立場を明確に把握する」という方法論に基づいた講習会の記録である。
第1講は、水林師に「キリスト教をめぐる日本人の精神史」の概略の講義。
第2講は、クリスチャンであり、北海道の浦河町という過疎地域で、統合失調症患者たちと共同生活をしながら年商1億5千万円の社会福祉法人「べてるの家」を運営する向谷地生良氏の宣教論。弱さを持った人たちと旅をしたイエスのように、過疎地・障害者という弱さに価値を見出す生き方を示された。
第3講では、宗教学者 正木晃氏による一神教とイスラム教を学ぶための基礎知識んついての講義。
そして3人の講師によるパネルディスカッションでは、一神教社会とのかかわり方、日本仏教の可能性について意見が交わされた。
法華経の持つ包容力によって一神教をどこまで包み込めるかが重要な課題である。
「立正安国論」奏進七五〇年慶讃
東京都南部布教師会「立正安国論」輪読会のあゆみ
平成20年発行
東京都南部布教師会では、『立正安国論』の各段を布教師会の会員が一段ずつ解説を加えながら拝読する輪読会を平成16年から19年にわたって開催してきた。その各担当者の個性に富んだ提言・主張や参加者による意見交換をまとめたのが本書である。
それぞれの主張や意見はまだまだ理解の浅い部分も見受けられるが、学び方の記録として興味深いものがあるのではないだろうか。
各段ごとに、抜粋・現代語訳・要約(あらすじ)が掲載されており、さらに宗門内外の講師を招いて『立正安国論』に関する講演・研修の記録も掲載されている。『立正安国論』入門書の一つとして参考になるものだと思う。