〜 お坊さんコラム 〜
満つれば欠ける
「満つれば欠ける。満ちた時に響いてくるものがある」
これは書の師が講演で語った言葉です。
いくら書の大家とて、
いつでもすばらしい作品がパッと書けるものではなく、
毎日積み重ねてきた修練の賜物である。
満ち欠けを繰り返す月も満月には光り輝く。
書においても満月になった時こそ
人の心を打つ素晴らしい「響き」が生まれるのではないでしょうか。
これは『史記・蔡沢伝』の
「語に曰く、日中すれば則ち移り、
月満つれば則ち虧(欠)く、と。
物盛んなれば則ち衰うるは、天地の常数なり。
進退盈縮(しんたいえいしゅく)、時と変化す。聖人の常道なり」
という一節から引用したのだと思います。
この世は諸行無常なのだから、
書に限らず同じ状態が続くことはありえない。
だからこそ私たちは何事においても
「満月」を目指して毎日努力を惜しまず
続けていくことが大切なのです。
三井妙真
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